1.血中ドーパミン濃度のカースト間比較 女王の脳内ドーパミン量はワーカーのそれに比べ4-1O倍高いが、このドーパミンが脳以外の組織から供給されている可能性を検討するために、血中ドーパミン濃度をカースト間で比較した。その結果、脳と同様に、血中ドーパミン濃度も女王で有意に高かった。女王の高い血中ドーパミン濃度は、(1)他の組織からのドーパミン供給による結果、(2)脳由来のドーパミンが血中に拡散した結果、の二つの可能性が考えられる。 2.脳以外の組織におけるDDC活性の測定 脳以外の組織において、ドーパミン合成が行われているかを調べるために、女王から大顎腺、唾液腺、卵巣、および脳を摘出し、それらの抽出液を用いて、DDC活性を測定した。その結果、脳では高いDDC活性が検出されたのに対し、大顎腺、唾液腺、卵巣では脳の1/10以下の低いDDC活性が検出された。これらの結果から、女王におけるドーパミン合成は主に脳で行われていることが示唆された。 3.ドーパミンレセプター選択的アンタゴニストによる卵巣発達の阻害 無女王コロニーのワーカーを用いて、ドーパミンレセプターに選択的に作用するアンタゴニストを経口摂取させ、卵巣発達に影響が生じるかを調査した。その結果、D1レセプターアンタゴニスト(SCH23390)を摂取させた個体では、卵巣発達(卵巣直径・卵黄形成)がコントロール個体とほぼ同程度であったのに対し、D2レセプターアンタゴニスト(raclopride)を摂取させた個体では、卵巣発達がコントロール個体よりも有意に阻害された。これらの結果から、ドーパミンによる卵巣発達への作用はD2レセプターが関与している可能性が示唆された。
|