研究概要 |
2002年に、新昆虫目として、アフリカ大陸南部において発見・発表されたカカトアルキ目に関し、比較発生学的アプローチから、この新昆虫目の系統学的な位置づけ、ならびに系統進化に伴う体制の変遷に関する議論を行った。 生息地である南アフリカ共和国内でのサンプリングにおいて、本研究代表者らが2003年に新種記載したカカトアルキ2種Karoophasma biedouwensis, Hemilobophasma montaguensis(いずれもミナミカカトアルキ科)を採取し、飼育の後に採卵し、研究試料として用いた。これらを試料とし、胚発生過程を、主として外部形態の形成プロセスを記載するとともに、類縁性が示唆される近縁の昆虫種群と比較・検討した。結果、環太平洋地域に局所分布するガロアムシ類との発生学的共通形質が確認された。 同時に、共同研究として進めている形態・分類学的研究、生態学的研究、分子系統学的研究においても、知見の蓄積が進み、これらの多方面からのアプローチにおいても、やはりカカトアルキ目とガロアムシ目間での共通形質が認められた。 特に、卵形態に関しては研究が進展し、特に、二次卵膜である卵殻の微細構造の観察に加え、これまで確認できずにいた卵門構造を電子顕微鏡レベルで詳細に観察することができた。卵門構造は、カカトアルキ類の類縁性を探る上で重要な形質であり、発見当初(2002年)に、最初に関連性が示唆されたナナフシ類における特化した卵門構造とは大きく異なる構造であること、一方で、比較発生学的に類縁性が示唆されるガロアムシとの関係においては矛盾のないことを確認した。さらに今後、これらの共通形質に関して、より詳細な検討を加え、共有派生形質としての評価を行ないたい。これらの成果の一部は、既に、学会・学会誌上で発表している。
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