研究概要 |
オゴノリ科(紅藻綱オゴノリ目)は,外形の変異が著しく分類形質である生殖器官が確認されていない種が多いことから,分類に多くの問題点を抱えている。これまで,本科内には主に3属(Gracilaria, Gracilariopsis, Hydropuntia) が認められてきたが,南西諸島から東南アジアにかけてのGracilariopsisとHydropuntiaに関する知見が不足していることから,形態分類学的・分子系統学的手法によって再検討をおこなった。17年度は,南西諸島および東南アジア産,ハワイ諸島産のGracilariopsisとHydropuntiaを対象とし,属内各種の形態的知見を整理するとともに,葉緑体コードのrbcLとrbcL-Sスペーサー,核コードのCox2-3スペーサーの各領域を分子系統解析し,各種および種内分類群の系統的な位置関係と系統樹に相関した形態形質に基づく分類の再検討をおこなった。 インドネシア(スラベシ島),ハワイ諸島および琉球列島において採集された材料および各大学標本庫(Sam Raturangi大学標本庫,鹿児島大学標本庫,九州大学標本庫,および北海道大学理学部)に収蔵されている標本を観察した結果,ハワイ諸島および南西諸島より既知の種類にあてはまらない未同定Gracilariopsis属を確認した。これらの材料を分子系統解析した結果,南西諸島の材料は温帯性のGracilariopsis chordaと単一のクレードを形成したが,2塩基程度の置換が見られGracilariopsis chordaの起源的な場所に位置した。また,南西諸島産の未同定種とハワイ産未同定種は,分枝が少ない点と生殖器官の形質の点で形態的に類似したが,東アジアとポリネシアで別のクレードを形成し,それぞれ独自に種分化した別種であることが考えられた。また,本州中部に生育するセイヨウオゴノリは,形態的形質から太平洋東部のGracilariopis lemaneiformisの学名が充てられてきたが,Gracilariopsis chordaと同じクレードを形成し,本種に系統的に近縁であることが示唆された。
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