研究概要 |
オゴノリ科(紅藻綱オゴノリ目)は,外形の変異が著しく分類形質である生殖器官が確認されていない種が多いことから,分類に多くの問題点を抱えている。これまで,本科内には主に3属(Gracilaria, Gracilariopsis, Hydropuntia)が認められてきたが,南西諸島から東南アジアにかけてのGracilariopsisとHydropuntiaに関する知見が不足していることから,形態分類学的・分子系統学的手法によって再検討をおこなった。18年度はベトナム,マレーシア,ハワイ諸島産のGracilariopsisとHydropuntia試料を用い,属内各種の形態的知見を整理するとともに,葉緑体コードのrbcLとrbcL-Sスペーサー,核コードのCox2-3スペーサーの各領域を分子系統解析し,各種および種内分類群の系統的な位置関係と系統樹に相関した形態形質に基づく分類の再検討をおこなった。また,タイでフィールドワークをおこなった。 タイ,ベトナム,マレーシア,ハワイ諸島および琉球列島において採集された材料および各大学標本庫(Kasetsart大学標本庫,Nha Trang海洋研究所,鹿児島大学標本庫,九州大学標本庫,および北海道大学理学部)に収蔵されている標本を観察した結果,原記載以降に基準標本が行方不明だったGracilariopsis phantiensisを確認した。基準標本を含む材料を分子系統解析した結果,本種は東南アジアの有用寒天原藻であるGracilariopsis bailiniと単一のクレードを形成し,後者が異名になることを確認した。タイとマレーシア産の標本を整理し,マレー半島の本科藻類相と近傍海域との類似性について考察した。その結果,インド洋固有の種類はマレー半島に分布せず,本半島の本科藻類相は南シナ海北部海域と類似することが示唆された。本研究の成果を2007年3月に開催された第19回国際海藻学シンポジウム内のミニシンポジウムで招待講演し,プロシーディングおよび他誌に投稿中である。
|