研究概要 |
長野県八ヶ岳北部の昨年度に発見したナンジャモンジャゴケの新産地において,同種の生育状況を調査し,サンプルを得ることができた.採集したサンプルを,光の当たる冷蔵ショーケースに保存することで,生サンプルをいつでも実験に用いることができるようになった.八ヶ岳産ナンジャモンジャゴケについて充分量のRNAおよびDNAを抽出することができた.この材料について,rbcL, psaA psaB, psbD, rpoC2の5遺伝子の部分塩基配列を,RNAおよびDNAについて決定することができた.rbcL遺伝子1278塩基中に32カ所,psaA遺伝子440塩基中に13カ所,psaB遺伝子1630塩基中に28カ所,psbD遺伝子462塩基中に26カ所,rpoC2遺伝子864塩基中に18カ所のRNA editing部位を確認することができた.名古屋大学遺伝子実験施設の杉田護教授のグループも本種の葉緑体ゲノムについて解析を進めているので,データを交換し協力体制をとっている.そこで上記5遺伝子に加え,提供を受けたatpB, petB, petD, psbB, psbH, psbNの6遺伝子のRNA塩基配列のデータを用いて,最尤法で系統解析を行った.その結果,まだ十分な情報量ではなく,統計的に有意ではないものの,ナンジャモンジャゴケ類がセン類とタイ類からなる系統群の姉妹群になり,ツノゴケ類はその外側に来て,コケ植物全体が単系統となり,現生の維管束植物とは姉妹関係になる可能性がもっとも示唆された. 7月にウィーンで行われた国際植物科学会議で中間段階を発表した.陸上植物の大系統について,国内外の研究者と意見交換を行うことができた.また,本年度の成果全体について,3月に日本植物分類学会において発表し,高い評価を得,大会発表賞を受賞することができた.
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