研究概要 |
これまでコケ植物では,セン類のヒメツリガネゴケ,タイ類のゼニゴケ,ツノゴケ類のホウライツノゴケの3種類でしか葉緑体ゲノムが解析されておらず,比較の対象となる他の分類群のデータが十分ではなかった.この状況では,本研究でナンジャモンジャゴケ類の葉緑体遣伝子データを蓄積したとしても,信頼のおける系統樹は構築できないということが,平成17年度の解析の結果示唆されたので,系統的に議論の対象となる他のコケ植物の多数の葉緑体遺伝子を解析することにした.しかし,研究代表者の不慮の事故による負傷などのため,年度初めの計画に比べてあまり実験を進めることができなかった.「ナンジャモンジャゴケ同様にセン類の中で系統的に基部に位置する」と議論されることのあるミズゴケ類のオオミズゴケについては,培養株からDNAを抽出し,葉緑体遺伝子を解析することができたが,これらのデータを加えた解析はまだ途中の段階で,平成18年度中にデータ取りまとめて解析・考察し学会発表,論文発表をすることはできなかった.これまでの成果を取りまとめた解析と論文作成が急がれる. 一方,データを交換し合い協力態勢をとっている名古屋大学遺伝子実験施設の杉田護教授のグループは,当方の提供した材料を用い,ナンジャモンジャゴケの葉緑体遺伝子のpsbBオペロンの6遺伝子とrpoA遺伝子を解析し,132カ所のRNA編集サイトを確認し,これまでに陸上植物で報告がないほどの高頻度RNA編集が起きていることを示していたが,この結果については協力して1報の共著論文にまとめることができた.
|