研究概要 |
セラミド(Cer)は近年、細胞内脂質セカンドメッセンジャーとして細胞周期の停止やアポトーシスの誘導に関与する事が明らかになり注目を集めてきた。しかし、Cerの細胞内における直接のターゲットが明らかになっていない為に、Cerの代謝産物や代謝酵素のCerシグナリングにおける役割も最重視されつつある。我々はCer代謝酵素であるセラミドキナーゼ(CERK)に注目し、本酵素の生理的役割を明らかにすべく本研究を遂行している。CERKはCerをリン酸化しCer1-リン酸(C1P)を生成する酵素で、これまでそのN末端にPleckstrin homology (PH) domainを持っている事が知られていた。しかしその生理的な役割は不明であった。本年度我々はこのCERKのPHドメインが細胞膜のフォスファチジルイノシチド(4,5)二リン酸に結合する事で、CERKが膜へ移行し、細胞内のC1P量が上昇する事を明らかにした(Biochem.Biophys.Res.Commun.2005)。また昨年報告したCERK阻害剤が、マスト細胞の脱顆粒を抑制する事を確認し、アレルギーを標的とした新しい創薬のターゲットとなる可能悔を示した(バイオサイエンスとインダストリー2006、Sphingolipid Biology 2006)。創薬のターゲットを示す一方で、食物に含まれるセラミドの代謝も解析し、食物に含まれる脂質代謝がアレルギーに対して何らかの影響がある可能性を示唆した(J.Dermatol.Sci.)。その他にCERKに関して、現在CERK遺伝子欠損マウスを用いた解析を遂行中で、いくつかの興味深い知見を得ている。19年度は本研究の最終年度なので、これらCERK遺伝子欠損マウスの解析結果を発表する予定である。
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