分子シャペロンGroELは変性蛋白質を結合し、続いてATPとGroESが結合することで変性蛋白質をGroEL/GroES複合体の空洞内に閉じこめ、フォールディングを促進する機能を持つ。これまでGroES7量体中に複数の結合できない変異型サブユニットを混ぜると中間体でフォールディング反応が遅くなったことから、「GroESと変性蛋白質は三者複合体形成過程の中間体でそれぞれ別のGroELサブユニットに結合している」というモデルが示唆されていた。 初年度である平成17年度は、研究計画に示したように、遺伝子上で連結したGroES7量体(tandem GroES)の作成を完了し、このtandem GroESとGroEL/変性蛋白質の三者複合体について大まかな機能解析を行ってきた。 まず野生型GroES、不活性型GroES変異体の比をN末端から連続的に変えたtandem GroESを作成し、これらによる蛋白質のフォールディング能を検討した。この結果、4つ以上の連続した野生型サブユニットがGroELへの結合とフォールディングに必要であることがわかった。また野生型サブユニットが減少するにつれて、変性蛋白質がGroES/GroEL/変性蛋白質の三者複合体の中に取り込まれにくくなることがわかった。 次に4つ以上の野生型サブユニットを含んだ全ての円順列組み合わせ(9パターン)を作成し、同様にこれらの機能解析を行った。野生型サブユニットが不連続になった組み合わせではGroES/GroEL/変性蛋白質の三者複合体が形成しにくいだけでなく、フォールディング速度も減少した。現在、このフォールディング速度の減少が擬似的中間体の形成によるものと考え、この中間体の性質について詳しく研究しているところである。
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