研究概要 |
大腸菌において,ATP依存性プロテアーゼであるLonやHs1VUは,ある種の細胞内の特異的生理基質を分解する際に,その構造的・機能的に重要な部位を優先的に分解することが,本研究者の従来の研究より明らかとなっている(Nishii et al.(2002)Eur.J.Biochem.269,451-457,Nishii & Takahashi,(2003)FEBSLett.553,351-354,Nishii et al.(2005)FEBS Lett.579,6846-6850).このことは,基質の機能の迅速かつ徹底的な抑制に貢献すると考えられる.本研究は,このような基質分解過程が,酵素・基質のどのような分子機構によるのか解明することを目的とする.本年度は,これら酵素をX線結晶構造解析により,立体構造を決定するため,酵素の大量調製法の改良および結晶化スクリーニングを行うともに,各種アミノ酸変異による基質認識様式の変化について解析した.大腸菌Lonの結晶化は,断片についての報告が一部あるものの,全長蛋白質については,結晶化が成功したという報告はない.これは大腸菌Lonがin vitroで自己分解が激しいこと,またその自己分解産物が多量体構造を持つ本酵素の構成単量体として取り込まれ,単一成分からなる完全長酵素の調製が困難であるからと考えられる.本研究では,urea添加による蛋白質変成条件下で,会合状態を解離させることにより,会合体に含まれる自己分解産物を除去し,その後ureaを透析により除去することにより,高純度のLonを調製することに成功した.現在,結晶化スクリーニングを実施中である.また,LonのATPaseドメインに存在するヒスチジン残基が,ペプチド基質認識に重要であることを,部位特異的変異法により見いだした.現在,その詳細を検討中である.
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