ゾウリムシの繊毛の波打ち運動の方向は、繊毛膜上の電位依存性Ca^<2+>チャンネルの活性化によって制御される。これまで、このチャンネルの必須制御因子としてCa^<2+>結合蛋白質Centrinを同定した。CentrinにはCa^<2+>結合部位(EF-hand)が4箇所(EF-hand 1〜4)存在する。またCentrinなどのCalmodulinファミリーはEF-hand 1と2およびEF-hand 3と4がペアとなって働くと考らえられている。そこでCentrinのCa^<2+>感受性とCa^<2+>チャンネルの関係を調べることを目的として、CentrinゲノムDNAに塩基置換を施し、各EF-hand 1〜4のCa^<2+>結合能を損なわせた変異型遺伝子やEF-hand 1と2およびEF-hand 3と4のCa^<2+>結合能を同時に損なわせた変異型遺伝子を調製した。また、このCentrinは他のCentrinファミリーに比べN末部分に特徴的なアミノ酸配列を持つ。そこで上述の変異型遺伝子に加え、N末の2-35番目のアミノ酸を欠失させた遺伝子も調製した。そして、これらの変異型遺伝子をCentrinの突然変異体(cnrC)にInjectionして、変異部位が電位依存性Ca^<2+>チャンネルの機能回復効果に与える影響を検討した。その結果、EF-hand 3と4がCa^<2+>存在下で協調的に立体構造を変化させることが、電位依存性Ca^<2+>チャンネルの活性に必須であり、その際EF-hand 4はEF-hand 3に比べより機能的であることが分かった。また、N末部分もCa^<2+>チャンネルの活性に重要な働きをしていることが分かった。cnrCのCentrinは、突然変異によりEF-hand 4を含むC末側の28アミノ酸を失っている。この結果からもEF-hand 3と4の協調的なCa^<2+>感受性が電位依存性Ca^<2+>チャンネルの活性に重要であることが示唆された。
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