エイコサノイド前駆体や細胞内シグナル伝達分子として重要な多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸の細胞内動態を可視化するために、前年度にプロテインキナーゼCまたはジアシルグリセロールキナーゼとオワンクラゲ由来緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を雛形として細胞内遊離アラキドン酸濃度の上昇に応答して局在を変化させるプローブを作製したことを踏まえ、これらのプローブ候補の改良および特性の評価を行った。まず、プローブ候補の両端にそれぞれYFPとCFPを融合することでアラキドン酸との結合により蛍光特性が変化するプローブの作製を試み、次にアラキドン酸が結合すると推定される領域近傍のアミノ酸残基に対して突然変異を導入した。これらの変異によってプローブ候補のアラキドン酸の検出感度や各種長鎖脂肪酸に対する特異性がどのように変化するかを、マウス線維芽細胞由来L929細胞やチャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞を用いて、細胞外からアラキドン酸を添加した場合と受容体刺激やケージドアラキドン酸への紫外線照射などにより細胞内でアラキドン酸を産生させた場合とで比較検討した。さらに、cPLA2αの細胞内局在の可視化ツールとして既に確立しているRFP-cPLA2αとアラキドン酸プローブを初代培養小脳プルキンエ細胞に発現させ、グルタミン酸受容体刺激後のcPLA2αの細胞内局在変化とアラキドン酸動態を同時に解析し、樹状突起部ゴルジ体へのcPLA2αの移動と並行して遊離アラキドン酸の生成が起こることを明らかにした。
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