本年度はアガロースマイクロ加工技術と多電極アレイを組み合わせた1細胞培養計測技術の開発を行った。まず、「細胞ネットワーク」の構造を自在に形成する技術、「細胞ネットワーク」の状態を詳細に計測する技術の開発のために、ソフトマテリアルであるアガロースを素材とした微細加工技術やアガロースマイクロチップ中での細胞培養技術、培養中のマイクロ形状の追加工など、今までの研究で開発してきた細胞ネットワーク構築技術のさらなる改良を行った。その結果、アガロースマイクロチャンバーを用いて、心筋細胞の接続する数を随時増加させることにより、拍動心筋細胞数の増加に伴って拍動リズムが安定することがわかり、電子ジャーナルであるJ.Nanobiotechnologyに発表した。また、心筋細胞同士が繊維芽細胞等の異種細胞を介して拍動が同期する現象を構成的に構築した異種細胞ネットワークを用いて明らかにし、インテリジェントマテリアル国際会議にて発表した。さらに、アガロースマイクロ加工技術と多電極アレイ刺激・応答計測システムとを組み合わせることによって、培養中における「細胞集団・ネットワーク」の電気計測を可能にする技術を開発した。具体的には、多電極アレイ基板上にアガロース層を塗布し、このアガロース層を集束赤外レーザ光で局所加熱することで3次元に構造を加工する技術を開発した。次年度は、この基板上にマイクロピペットを用いて細胞を配置し、物理的なストレスや、薬剤等の化学物質に対する応答反応を計測することにより、細胞集団のコミュニティ・エフェクト、ネットワークパターンが持つ後天的情報を解明していく予定である。
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