本研究では、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)の活性化に伴う構造変化を明らかにし、そこで得られる結果を、mGluRとは一次構造の類似性のないウシロドプシンを含むGPCRグループでの豊富な知見と比較し、単なる一次構造の比較では解らない活性化メカニズムの共通点を見いだすことを目的とする。本年度は研究計画に基づき、mGluRのG蛋白質活性化に関わる細胞質領域に種々の変異を施し、構造変化に関わる知見を収集した。 (1)これまでの研究から、mGluRのヘリックス4の細胞質側に、変異により刺激非依存的活性化能が上昇する残基(構成的活性化変異)を同定している。そこで、膜貫通ヘリックスの細胞質側2カ所(ヘリックス4ともう一カ所)にシステインを導入した変異体を作製し、酸化剤存在時にアゴニスト依存的・非依存的なG蛋白質の活性化能に影響がでるものを探索した。その結果、ヘリックス2と4の細胞質側にシステインを導入した変異体において、酸化剤処理後にアゴニスト依存的活性化能が低下することを見いだした。これは、ジスルフィド結合形成により構造変化が阻害されたためであると考えられた。 (2)(1)の探索過程で細胞質側に網羅的にシステイン残基の導入を行ったが、その際にヘリックス2と細胞質第1ループとの境界付近に、新たな構成的活性化変異部位を見いだした。構成的活性化変異体では活性化状態を模倣していると考えられるため、この残基はmGluRが活性化状態を形成する際にキーになるアミノ酸といえる。
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