膜蛋白質バクテリオロドプシン(BR)は、光を吸収することにより膜の内外に水素イオンの濃度勾配を作り出す。この光駆動プロトンポンプの反応中間体は低温下でトラップすることが可能であり、これらの構造解析も行われている。しかし温度と蛋白質の運動との関係は不明確であるため、われわれはX線結晶構造解析法を用いて構造の温度依存性を調べている。 BRの結晶化は粘性の高い脂質中で行うため、その取扱が難しくバッチ法でのみしか行えなかった。このため取扱を工夫することにより、蒸気拡散法を用いた結晶化手法を確立した。また析出した結晶の粘性の高い脂質からの取り出しの技術も確立した。さらに結晶化条件を工夫することにより、従来よりも大きく厚い結晶が得られるようになった。この結晶を用いてX線回折実験を行ったところ、実験室のX線発生装置であるにもかかわらず、1.8Å超の分解能データが得られるようになった。またこの結晶を用いて構造の温度依存的変化を調べるために100Kから170Kまでの温度で回折データの収集を行った。このデータは現在解析中である。また結晶化に用いる脂質を変えることにより、より粘性の低い環境下での結晶化に成功した。このことにより従来の脂質では結晶化中にBR濃度が低くなっても蛋白質を加えることができなかったが、粘性の低い環境では可能となった。さらにマクロシーディングによる結晶の巨大化にもつながると考えられる。これによりさらに分解能の高い結晶が得られるようになると考えられる。
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