研究概要 |
拘束型心筋症(RCM)原因性トロポニンI変異体の機能および構造について調べた。大腸菌により発現調製した、RCM原因変異体(144Q,R145W,A171T,K178E,D190G,R192H)をスキンドファイバーに組み込んで、張力発生を指標としてCa^<2+>応答性を観察したところ、K178Eで最も大きなCa^<2+>感受性の増強作用が観察された(Yumoto et al., 2005)。他の変異体についても、これまでに肥大型心筋症原因トロポニン変異体で観察されていたものよりも大きな変化であった。これは、アクトミオシンMg-ATPアーゼ活性を指標としたCa^<2+>応答性の解析結果によっても支持されるものであった。そこで、6種の変異体全てを含み、単独で可溶性となる領域TnI_<129-210>を大腸菌による発現調製系から得て、CD,NMRによる構造解析を行った。ただし、R145Wを含むペプチドのみ不溶性であったことから、この変異はタンパク質の溶解度を減弱されるものと考えられる。また、特に顕著なCa感受性の増強作用を示したK178E変異について、TnI_<129-210> K178EのCDスペクトルパターンは、野生型のものとほぼ同様であったことから、2次構造はほぼ等しいことがわかった。また、^<15>N標識したTnI_<129-210> K178Eの^<15>N-^1H HSQCスペクトル解析の結果、K178E変異は、177-181番目のアミノ酸残基の間における構造変化につながることが明らかとなった。また、L144Q,A171T,D190G,R192Hについても数アミノ酸残基のみの局所的な構造変化を導くことが明らかとすることができた。これらの結果からトロポニン関連RCMは、小さな局所的構造変化が導く、大きな機能変化によるものであることを明らかにすることができた。
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