ヒト・ミトコンドリアにおける蛋白質合成系の分子機構を解明することを目指し、生体外ミトコンドリア蛋白質合成系の構築を行った。具体的には、以下の4項目について取り組んだ。 (1)ヒト培養細胞からのミトコンドリアおよびミトコンドリア抽出液の調製方法の確立 翻訳活性を維持したミトコンドリアを高収率で得る調製方法を確立した。 (2)ミトコンドリアリボソームの調製方法の確立 豚肝臓ミトコンドリアからリボソームサブユニットを調製し、再会合を行うことにより、翻訳活性の高いリボソームを調製する方法を確立した。 (3)組み換えミトコンドリア翻訳因子の調製 翻訳に必要なすべてのミトコンドリア翻訳因子について、発現および精製方法を確立した。 (4)ミトコンドリア翻訳系の再構築 (1)-(3)で得たミトコンドリア抽出液、リボソーム、翻訳因子を利用し、ミトコンドリア翻訳系を再構築した。 その結果、FLAGペプチドなど、いくつかのペプチドの翻訳ができる生体外ミトコンドリア蛋白質合成系の構築に成功した。 『(3)組み換えミトコンドリア翻訳因子の調製』の過程では、新規なミトコンドリア翻訳終結因子HMRF1Lを同定した。 『(2)ミトコンドリアリボソームの調製方法の確立』の後、ミトコンドリアリボソームの生化学的解析をおこない、ミトコンドリアリボソームにE-siteを発見した。 構築した生体外蛋白質合成系を利用し、ミトコンドリア翻訳因子(EF-TumtおよびEF-Tsmt)の変異による疾患の発症機構の解析や、ミトコンドリア翻訳制御因子の機能解析を行った。
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