真核生物の遺伝子発現過程では、RNAの安定制御が最終的な発現量を決定する上で重要である。一方、多くのノンコーディングRNAは前駆体として合成された後、プロセシングによって成熟化する。これまでにRNAを3'→5'方向に分解するエクソヌクレアーゼが、エクソソームという巨大な複合体を形成し、細胞質と核それぞれに存在することが酵母において明らかになっていた。またこのうち核エクソソームに特異的な構成因子であるRrp6は、様々なRNAプロセシングや品質管理に関わる重要な因子であることが示されていた。本研究ではヒトのRrp6オーソログ(hRrp6)によって分解されるRNA種を特定し、酵母より複雑なRNAプロセシング系を有するヒト細胞におけるエクソソームの役割を明らかにすることを目標にした。まずhRrp6に対する特異的な抗体と高効率にノックダウンできるsiRNAを用いて、HeLa細胞においてhRrp6のノックダウンを行った。ノックダウン細胞からRNAを回収し、コントロールと共に各種RNAの蓄積量およびプロセシングパターンを解析したところ、核小体に局在するU3 snoRNA、マイクロRNA前駆体などがhRrp6のノックダウン細胞で多く蓄積していることを観察した。hRrp6の細胞内局在を抗hRrp6抗体を用いて解析したところ、多くが核小体に局在していることを確認した。さらに近年見つかったmRNA型ncRNAの発現へのエクソソームの関与を、ncRNAの発現を網羅的に解析できるマイクロアレイを用いて解析したところ、数十種類のncRNA様転写物の蓄積量が2倍以上に上昇していることを確認した。以上の結果から、hRrp6はヒト細胞でも核内に局在し、複数のRNA種のプロセシング及び分解に関与していることが示された。
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