本研究課題を遂行するにあたり、 1 Jab1の形成する複合体の構成因子の同定と機能解析 2 Jab1の生理学的機能の解析 に焦点をあて研究を進めた。 1では (1)TAP(tancem affinity purification)タグを付加したJab1を過剰発現する動物細胞株の樹立 (2)このタグを利用してアフィニティーカラムによりJab1を含む複合体を精製 (3)質量分析計を使用してJab1と一緒に精製されてきた複数の蛋白質のアミノ酸配列の決定 を行った。決定したアミノ酸配列から精製標本に既知のJab1結合タンパク質が複数含まれることが明らかとなった。このことから、実験系が有効に機能していると考え、精製されてきた蛋白質の中で、これまでJab1と結合することが報告されていない蛋白質について遺伝子を得て、抗体を作製した。この抗体を用いたウエスタン解析および免疫沈降から、この分子がJab1と動物細胞内で結合することを確認した。現在、この分子の機能について解析中である。 2では、Jab1遺伝子改変マウスを用いた解析を中心に (1)Jab1ヘテロマウスの寿命を観察 (2)Jab1ヘテロマウスとCdkインヒビターp27や癌抑制遺伝子産物p53の遺伝子改変マウスとの交配 (3)Jab1トランスジェニックマウスの作製と表現系の解析 (4)経時的な血液検査 を行った。これらの解析からJab1ヘテロマウスは短命であり、p27遺伝子に欠損がある場合、さらに短命になることが明らかとなった(一方、これまでのところp53遺伝子の欠損によって表現系に変化は認められない)。また、血液検査の結果から、Jab1トランスジェニックマウスとJab1ヘテロマウスでは加齢に伴い、造血系に異常が生じることが分かった。このことはJab1が造血系の維持に重要な役割を担う分子であることを示している。現在、その分子機構について解析を行っている。
|