内分泌細胞においてペプチドホルモンは、分泌顆粒に貯留・蓄積され、細胞外からの刺激に応答して分泌される。このような分泌顆粒の開口放出機構には、特異的な制御蛋白質が機能することが考えられる。これまでに代表者は、内分泌細胞に特異的に発現する蛋白質グラニュフィリンが、Rab27aおよびSyntaxinlaと相互作用することで、分泌顆粒を細胞膜の分泌部位に正確に繋留(ドッキング)することを明らかにした。本研究の目的は、グラニュフィリンをはじめとする様々な蛋白質の機能を解析し、分泌顆粒の開口放出の分子メカニズムを解明することである。 昨年度において、グラニュフィリン/Rab27aとSyntaxinlaの結合が解離し、膜融合へと移行する過程に、分泌刺激シグナルのひとつが機能することを見出した。また更に、MuncI8蛋白質とグラニュフィリンの複合体が、上記3者複合体とは別個に機能する可能性を示した。今年度はこの成果をより明確にするべく、さらに詳しい生化学的解析を進めた。その結果、分泌刺激シグナルの強弱(濃度)が3者複合体とMunc18/グラニュフィリン複合体のそれぞれの解離を調節することが明らかとなった。 代表者はまた、膜蛋白質フォグリンに注目してその解析を進めた。フォグリンはGFP等との融合蛋白質として外来的に細胞に発現させても、安定的に分泌顆粒に局在することから、顆粒の挙動を解析するツールとして優れており、すでに(上記)ドッキング過程の可視化に成功している。今年度はさらに、開口放出後の膜とりこみ(リサイクリング)について調べたところ、選別能を有するオルガネラを経由することなく、極めて効率的にリサイクリングすることが分かつた。
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