研究概要 |
上皮増殖因子(EGF ; epidermal growth factor)受容体は,細胞膜でEGFに結合して増殖シグナルを発信する.過度のシグナルは癌化につながるため,受容体はエンドサイトーシス経路を運ばれてリソソームで分解される.これまでのモデルでは,受容体は細胞膜でユビキチン化され,これがリソソームへの輸送シグナルとなると考えられていた.しかし,われわれがユビキチンリガーゼであるCblの局在を調べたところ,受容体とともに細胞膜からエンドソームへ移り,受容体はエンドソームまでずっとユビキチン化されていることが明らかになった.CblはSrcキナーゼによってリン酸化され,これはユビキチン化の活性に必要であることが知られている.EGFで10分刺激した後,Src阻害剤であるPPlを15分加えてCb1によるユビキチン化を阻害した.すると,墨初の10分に受容体についたユビキチンが,PPl処理の間にほとんど外れてしまった.したがって,受容体は非常に脱ユビキチン化されやすく,Cblはこれを防ぐためにエンドソームまでユビキチン化を続けていることが強く示唆された.CblはE2とよばれるユビキチン結合酵素と協調してユビキチン化を行う.E2のうち,これまではUbcH7がCblのパートナーであると提唱されていたが,局在とsiRNAによるノックダウン実験の結果,ubc4/5がcblと共同で受容体をユビキチン化していることが明らかになった.
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