研究概要 |
短期間に盛んに増殖するマウス生体の肝細胞と、成熟して安定期に入った成獣の機能的肝細胞では、肝細胞自体の遺伝子発現パターンとそれを支える核内環境の質的変化が予想される。このような比較的長期間維持される細胞の核マトリクス環境が、最終分化過程で如何に変化するのかを観察することは肝細胞での遺伝子発現調節を理解し、生体内での細胞の機能分化を考える上で非常に興味深い。本研究において肝細胞での核マトリクス結合配列を中心に細胞分化に伴う核マトリクス環境の変化を解明することを主たる目的とした。出生後、7日及び30日後のC57BL/6マウス肝臓細胞から核マトリクス画分を単離し、この画分から核マトリクス結合領域(Matrix-associated region, MAR)DNAを抽出し、pBSにクローニングしたプラスミドライブラリーを構築した。ライブラリーが含むMAR配列のサイズはPCRにより、約0.5k〜1.3kbであった。各ライブラリーのクローンをランダムに選び、試みに50クローンずつ塩基配列決定を行い、マウスゲノム情報と照合した結果、各ライブラリー間での共通性及び特定の遺伝子との関連性については、有意な傾向を見出せなかった。そこで、探索の方向性を見直し、MAR活性によるスクリーニングに変更した。生後30日のマウス肝由来の核マトリクスDNAを、ハイグロマイシン耐性遺伝子発現カセットの上流に挿入する形でのプラスミドライブラリーを新たに作成し直し、上記と同様に塩基配列を決定した後、マウス肝由来細胞株・Hepa1-6細胞に導入し、トランスフェクション後3週間でのコロニーの出現数をカウントするアッセイに切換えた。因みに陰性対照としては、ハイグロマイシンカセットのみのプラスミドを用い、陽性対象としては、ニワトリβグロビン遺伝子のHS4のコアインスレーター配列を用いている。現在、解析を継続中である。
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