血管内皮特異的細胞間接着分子VE-Cadherin (Vascular Endothelial Cell Cadherin)はアドヘレンスジャンクションの形成を介して血管のバリヤー機能を厳密に制御している。最近、我々は低分子量GTP結合タンパク質Rap1がVE-Cadherin接着を制御していることを明らかにした。平成17年度はその分子メカニズムについてさらに解析を行い、以下のような結果を得た。 (1)VE-cadherin接着によるRap1の活性化機構とその細胞間接着における役割 Rap1活性化モニターリングプローブを用いて血管内皮細胞におけるRap1の活性化の可視化を試みた。その結果、細胞間接着部位でRap1が活性化されることが分かった。この細胞間接着によるRap1の活性化はVE-cadherin接着に依存すること、またそのメカニズムとしてVE-cadherinがβ-cateninとアダプター分子MAGI-1を介してRap1グアニンヌクレオチド交換因子PDZ-GEFを細胞間接着部位にリクルートしRap1の活性化を惹起することを明らかにした。さらに、このRap1の活性化はVE-cadherin接着をさらに増強し、成熟したアドヘレンスジャンクションの形成に重要であることを示した。 (2)心筋細胞におけるサイクリックAMP (cAMP)によるN-cadherin接着およびgap junction形成機構 我々は心筋細胞についても解析を行い、cAMPがEpac-Rap1シグナル伝達系を介してN-cadherin接着を亢進することを明らかにした。また、それによってconnexin-43が細胞間接着部位にリクルートされ、Gap junctionの形成が亢進することがわかった。 (3)Rap1によるVE-cadherin接着亢進メカニズムの解析 血管内皮細胞においてRap1の活性化は細胞間接着部位でアクチン重合を惹起すること、またこのアクチン重合が細胞間接着部位でVE-cadherinを安定化させ、これによりVE-cadherin接着が増強されることが分かった。さらに、Rap1の活性化がエンドゾームから細胞間接着部位へのVE-cadherin分子の輸送を制御している可能性を示唆するデータも得ている。
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