生殖細胞は、生命の連続性を保証する極めて重要な細胞系列である。多くの動物では、生殖細胞の形成・分化は、卵内の特定の領域に局在する母性RNAにより決定される。母性RNAの局在化には、細胞骨格系の関与する輸送機構が働いていることが明らかとなっているが、局在化の分子機構の詳細は未だ不明である。私たちは、発生遺伝学的解析に優れたショウジョウバエを材料として、母性RNAの輸送・局在化に関与する新規因子の単離・同定を目的としたスクリーニングを行った。そして、5122系統について解析を行った結果、母性RNAの局在が異常となる突然変異体が66系統得られた。 平成17年度は、これら66系統の突然変異体の責任遺伝子の同定を進めた。多型を利用した染色体マッピング、相補性検定、既知遺伝子の対立遺伝子の検証を行うとともに、新規突然変異体については、最終的にシークエンスによる確認を行った。この結果、現在までに52系統12遺伝子座について責任遺伝子を同定している。これらのうち、既にRNA局在化への関与が報告されている3遺伝子座を含む、37系統6遺伝子座は細胞骨格系の制御因子をコードしていた。この結果は、RNA局在化制御に対する細胞骨格系の重要性を再確認するとともに、私たちの行ったスクリーニングがRNA局在化制御因子の単離という目的に対して有効かつ効率的な手段であることを示している。一方、13系統4遺伝子座は膜輸送に関与する分子(Rab5、Rabenosyn-5、Sec5、CG8683)をコードしていることが明らかとなった。これまで、RNA局在化と膜輸送との関連性を示唆するいくつかの報告はされているが、直接的証拠はなく、その詳細は全く不明である。そこで現在、これら4つの膜輸送関連因子について集中的な解析を進めている。
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