本年度は、形態形成に関連した遺伝子の詳細なゲノム地図の作製を目指し、世界に先駆けて成功した。特に、脳の分化に関連した遺伝子のFISH mappingでは、特定の染色体に集中的に分布することや、性分化に関連した遺伝子のmappingではいくつかが性染色体上に分布することを突き止め、性決定遺伝子のcandidateとして絞り込むことに成功した。これらの発見は、発生進化上でも非常に重要な知見である。また、個体群ごとで性分化関連遺伝子の性染色体上での位置が逆位などを通じて変化していることも明らかになった。これは、発生生態学的知見として非常に重要なものとなるであろう。 また、本年度2月にパナマ共和国のスミソニアン熱帯研究所において菌食アリのフィールド調査を行い、行動学的なデータ収集を行った。これにより、特に新熱帯で甚大な農業被害を出しているハキリアリの基質利用の選好性を明らかにした。その結果、植物の中でもツツジ科のものは有意に基質利用率が劣ること、菌園の基質として利用されず廃棄される率も他の植物より有意に高いことが分かった。現在、TOF-MSによる未知の微量元素の特定を行っている最中である。この実験が、新たな忌避剤の開発などに繋がるであろう。 本年度は更に、菌食アリ、の寄生菌に対する抗菌行動に関する新たな行動の発見とその効果について明らかにすることに成功した。これは菌食アリにのみみられる行動であること、寄生菌の寄生力とアリの抗菌行動が系統関係とともに「arms race」の関係にあること、等が明らかになった。
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