研究概要 |
MIP(Molluscan IDO-like Protein)はトコブシの消化管から単離された遺伝子で,トコブシIDO-like Mbと約60%のアミノ酸一致率を示す。しかしながら発現が消化管に限られ,また酸素を安定に結合しないことから,IDO-like Mb(口球筋でのみ発現)の単なるアイソフォームではないと考えられる。軟体動物におけるMIPの普遍性探るため,今年度はトコブシ近縁種の消化管よりmRNAを調整,RT-PCRによりMIPの単離を試みたが,現在まで増幅には成功していない。次年度はゲノム・ライブラリーからのスクリーニングを試みると共に,その機能解析にも着手する。 IDO-like Mbに関しては部位特異的突然変異の導入により近位ヒスチジン(His)を同定,更に分子内の全てのHisについて変異体を作成,酸素安定性に関わると予想される遠位リガンドを模索した。2つの候補残基が示されたものの(His74,His288)これらは酸素ではなく,ヘムそのものの安定に関与していると考えられた。即ち,IDO-like Mbの遠位リガンドはHis以外の残基である可能性が示唆される。意外な結果ではあるが,これは最近決定されたヒトIDOの立体構造のデータとも整合している。次年度は,MIPとのキメラタンパク質を作成することにより,IDO-like Mbの酸素安定化機構についてアプローチする。 IDOに関しては,両生類,魚類からホモログ遺伝子を単離,大腸菌での発現に成功している。詳細な酵素パラメーターを決定することにより,IDOの分布は哺乳類から一気に脊椎動物にまで広がることと予想される。
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