トラフショウジョウバエ(Drosophila kikkawai)の重複アミラーゼ遺伝子のコピー間で遺伝子発現調節の違いをもたらすシスエレメントを同定するため、本年度は分子集団遺伝学的解析(Inomata & Yamazaki 2002)で5'上流域における中立進化からの有意なずれが観察されたAmy1遺伝子について研究を行った。これまでの異種間トランスフォーメイションによるパイロット実験で、Amy1遺伝子1.5kbおよびその5'上流域約1.7kbと3'下流域約2kbを含んだ約5.2kbのDNA領域のうち、少なくともAmy1遺伝子とその5'上流域約1.7kbおよび3'下流域約300bpがあれば、キイロショウジョウバエにおいてトラフショウジョウバエの遺伝子発現パターンを示すことがわかった。この約1.7kbの領域には、キイロショウジョウバエとの塩基配列比較からアミラーゼ遺伝子発現に関わると推測されるいくつかのシスエレメント配列が存在する。そこで、Amy1遺伝子5'上流域のdeletion mutantationによるDNA constructの作製を行った。 分子集団遺伝学的解析からAmy1遺伝子では推定上のCATモチーフ近傍や環境応答に関わる推定上のシスエレメント配列の2つの多型サイト間に強い連鎖不平衡が見つかった。それらhaplotypeの進化的意義を検討するためにAmy1遺伝子5'上流域のsite drected mutagenesisによるDNA constructの一部を作製した。 上記の作製したDNA constructをP因子仲介形質転換法によってキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogasterに導入した(異種間トランスフォーメイション実験)。各DNA constructについて複数の系統を交配実験により確立した。これら確立した系統について、DNA constructが導入されたゲノムの場所を明らかにしているところで、アミラーゼ遺伝子発現調節領域の同定のための系統準備が可能になりつつある。
|