真核生物の核ゲノム内の遺伝子には多数のスプライセオソーム型イントロンが存在している。その起源や進化の過程など、不明な点が多く残っている。これを明らかにすることは、ゲノム機能の発現を理解する上できわめて重要な課題である。本研究では、スプライセオソーム型イントロンの進化の過程を明らかにするために、リボソームタンパク質(RP)を用いた解析を行った。 (1)イントロンの出現時期の推測 ミトコンドリアは真正細菌を起源とするため、独自のRP(MRP)を持つ。MRP25種は、細胞質に存在するRP(CRP)25種とホモログの関係にある。そこで、MRPとCRPの遺伝子構造をアミノ酸配列をアライメントすることにより比較し、共通の位置にあるイントロンを解析した。その結果、MRPのイントロンは、原始的な生命から保存されたものではなく、真核生物において獲得されたと推測された。また、ゲノムにおけるパラレル挿入の頻度は、2.3%と見積もられた。 (2)Maximum likelihood methodを用いたイントロンの進化の推測 イントロンの進化の機構を解明する上で、生物進化の過程におけるイントロンの挿入や欠失の割合を正確に知る必要がある。我々は、新しいMaximum likelihood method(最尤法)を用いて、この問題にアプローチした。この結果、ターゲットサイトは12bpあたり1カ所存在すると見積もられた。これは、「イントロンは真核生物において拡散した」とする後生説において提案されてきたプロトスプライスサイト説と一致した。また、生物進化の過程におけるイントロンの挿入と欠失の値は、挿入の方が欠失よりも多く、このことからも後生説が支持されると考えた。今回の解析は、新たにターゲットサイトの頻度を決定していることから、これまでの解析に比べ、より信頼性が高いものであると考えられた。
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