研究概要 |
本研究では,瞬目の潜在的生理機能を解明し,意思を随意性瞬目によって伝達しようとする意思伝達支援システムの構築を最終的な目標と定めているが,随意性瞬目をいかに正確に抽出するかという問題の解決無しに達成は困難である.そのため,今年度はシステムそのものの製作よりも,弁別精度や再現性のある実験方法の確立に重点をおいた研究を行った.得られた研究成果は以下の2点である. 1 健常者において,3種類の瞬目に伴う運動関連脳電位を計測した.随意性瞬目では瞬目が開始される約1.5秒前から緩やかな陰性変動を認めたが,一方の自発性瞬目と反射性瞬目においては明確な電位変動が認められず,顕著な相違点であることが分かった.瞬目に伴う運動関連脳電位は瞬目の生理的潜在機能を中枢レベルで議論する際には有用であるが,リアルタイムの弁別が必要となる意思伝達支援装置への応用において,アベレージングに必要な計測回数やSN比の点で筋電図よりも不利である.個人差を考慮しながら一発の脳電位の解析で弁別を可能とするような新たな解析方法の検討が必要である. 2 眼輪筋筋電図に対してMorletの連続ウェーブレット変換を行い,周波数の変化を時間軸で捉えるカラーマップを作成した.カラーマップは横軸に時間,縦軸には周波数がそれぞれ示されている.自発性瞬目では,筋電位の発火開始約20ms後に,75Hz〜100Hzの帯域を持つ筋電位活動が認められた.一方,随意性瞬目においては,筋電位の発火開始約35ms後に,自発性瞬目より低周波数である50Hz近傍にピークを持つ活動が認められ,その15ms後には,65Hz周辺に第2番目のピークを持つ活動が明らかとなった.直感的にはこれまでの時間領域のパラメータを用いた弁別よりも,周波数領域のパラメータを用いた弁別のほうが圧倒的に優れているように思われた.統計的手法に基づく検討は来年度の課題とする.
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