研究概要 |
植物の日長感受性の分子機構を明らかにすることを目的に研究を行っている。本年度は以下の研究を行った。 1.開花制御遺伝子のタンパク質複合体の単離と同定 イネの開花制御遺伝子であるOsGI, Hd1, Hd3aのそれぞれにTAPタグを付加したコンストラクトを導入した形質転換植物と培養細胞を作出した。OsGI : TAPの培養細胞から複合体を単離し、タンパク質を同定した。 2.コアコレクションを用いた開花制御因子の解析 イネコアコレクション64品種において、短日条件下で開花時期とHd3aの遺伝子発現量を解析した。その結果、開花時期の早い品種はGd3aの発現量が高く、Hd3aの遺伝子発現量と開花時期の間には相関が認められた。同時にこれら全ての品種に光中断処理を行い、翌日にHd3aの発現量を調査したところ、64品種中の58品種で光中断によるHd3a遺伝子の発現抑制が認められた。以上のことから、イネではHd3a遺伝子の発現量が開花の主たる原因であること、殆どのイネ栽培種では光中断の分子メカニズムが保存されていることを明らかにした。 3.長日条件下での開花促進因子OsMADS50/OsSOC1の解析 自然条件下で遅咲きになる変異体の解析からOsMADS50/OsSOC1が自然条件下で開花を促進する因子であることを以前に見いだしている。この変異体を制御された日長条件で生育したところ、長日条件下では野生型に比べて遅咲きになるが、短日条件下では変異体は野生型と同時期に開花するという新しい表現型を見いだした。また、OsMADS50/OsSOC1の信号伝達はOsGI, Hd1, Hd3aとは独立して長日条件下で開花を促進する因子であることも発現解析から見いだした。
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