研究概要 |
イネ品種コシヒカリと同品種の半矮性突然変異系統北陸100号との間の交雑後代に見いだされたd60とgalは補足的に作用する配偶子致死遺伝子であり,d60は稈長と雌雄両配偶子形成の両方に作用をもつ遺伝子である. 本研究の目的は,イネの配偶子致死遺伝子d60,galをポジショナルクローニングによって単離し,これらの正常対立遺伝子が配偶子形成および稈長を支配する遺伝機構で担う役割を明らかにすることである.本年度は,日本品種との間で高頻度のDNA多型が観察されるインド型品種カサラスと北陸100号との交雑後代を用いて,両遺伝子の染色体上の座乗位置の決定を試みた. カサラスに北陸100号を連続戻し交配して育成したd60,gal遺伝子が分離するBC_3F_1,BC_4F_1世代を圃場に展開し,稈長と種子稔性を調査したところ,両遺伝子をヘテロでもつと思われる長稈・種子稔性低下個体がおよそ1/3の割合で出現した.また,稈長の分離は連続的であったが,北陸100号並の短稈個体の割合はd60遺伝子単独の分離から予想される1/2より明らかに低いこと,短稈個体の中には種子稔性低下個体が認められないことから,両遺伝子が分離していることが確認された.染色体全体をカバーする176のDNAマーカーを用いた連鎖解析の結果,d60は第2染色体動原体付近のSSRマーカーRM1106との連鎖が認められ,galは第5染色体短腕のSTSマーカーR1688との連鎖が認められた.
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