ほふく茎による栄養繁殖は、芝草類・牧草類や園芸作物をはじめ多くの植物に見られる増殖様式として重要だが、その生物学的メカニズムについてはまだ研究が少ない。本研究ではシバ(Zoysia japonica Steud.)のほふく茎による繁殖に優れた品種「朝駆」「朝萌」を主な研究材料として、ほふく茎繁殖に関わる遺伝子を単離・解明することを目的とする。 昨年度において、予備調査としてシバのほふく茎の伸長様式を詳細に調査した。密植またはポット植のシバから周辺の裸地へ伸長するほふく茎の節間長を約1週間間隔で測定した結果、シバのほふく茎は第1・2節間で伸長しており、第3節間以降はほとんど伸長を終えていることが明らかになった(ここでは外部から判別可能な最も先端の節群を第1節群とし、第1節群より先端側を第1節間、第1節群〜第2節群の節間を第2節間、などと呼ぶこととした)。この結果を元に、第1節間(伸長期)と第3節間(静止期)、および直立茎を比較対象として、Differential Display (DD)法により、発現に差のある遺伝子の探索を試みた。また分枝に関わる遺伝子の探索を目的として、節群の組織もDD法の対象に加えた。 シバの「朝駆」「朝萌」両品種のほふく茎の先端約3節を採取し、節や直立茎などの部位別に分けて液体窒素凍結後、これらからRNA抽出とcDNA合成を行い、Operon社の10mer RAPDP Primerを用いてDD法を行った。これまでのところ、第1節間(伸長期)や直立茎で特異的なPCR断片が複数ずつ得られており、これらのクローニングを進めている。今後さらに部位特異的なDNA断片の探索を進めるとともに、得られた遺伝子の特定と全長の単離、形質転換などによる機能解析に順次取り組む。
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