研究概要 |
1.目的 湿生植物は通気組織が良く発達し,地上部から地下部に酸素が供給されることで湿害を回避している.ダイズは湛水条件下でコルク形成層から二次的に形成される通気組織(二次通気組織)を形成するが,形成程度も小さめに,湿害の影響を大きく受ける.組織形成においては植物ホルモンが関与することが知られていることから,二次通気組織の形成もそれらと深く関係を持つと推測される.本研究では,二次通気組織の形成において関与する植物ホルモンを特定するために,外生ホルモンおよび生成・機能阻害剤に対する形態形成反応を明らかにする. 2.方法 品種アソアオガリを供試し,グロースチャンバー内(25℃常温,16時間日長)で栽培した.砂200mlを充填した400mlポットに1粒播種し,初生葉展開後に各植物ホルモンを溶解した水溶液を用いて,+3cmの水位を保つ湛水処理を行った.処理開始後6日目に水面下2cmの胚軸部を中心に生切片を作成し,二次通気組織の発達程度を観察した.一部材料については,ピクノメーター(比重瓶)を用いて発達程度の指標である空隙率を測定した. 3.結果の概要 通気組織の発達程度を見ると,高濃度(50μM以上)において抑制されにくいホルモン類,中濃度(10μM)で抑制されるホルモン類および低濃度(1μM以下)で抑制されるホルモン類の3種類に分けられた.ABAは1μMで二次通気組織の形成を抑制したことから,二次通気組織形成に対する強い阻害剤であると考えられた.胚軸における空隙率とABA濃度の関係を見ると、空隙率は0.1μMではコントロール(水)と同程度の約50%であったが,0.5μMになると27%まで低下し,1μM以下では10%程度であった.
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