研究概要 |
1.目的 ダイズは湛水条件下でコルク形成層から二次的に形成される通気組織(二次通気組織)を形成するが、形成程度も小さいめに、湿害の影響を大きく受ける。通気組織の形成に関する生理的・遺伝的背景を明らかにすることで、形成に関する遺伝資源の効率的選抜や遺伝子組換え技術の活用が可能となり、耐湿性ダイズ品種の育成が期待される。組織形成においては植物ホルモンが関与することが知られていることから、本研究では二次通気組織形成との関係を明らかにする。 2.方法 品種アソアオガリを供試しグロースチャンバー内で栽培した。砂200mlを充填した400mlポットに1粒播種し、初生葉展開後に胚軸の環状熱処理(師管の通導を抑制する処理)や初生葉の連続暗処理(アルミホイルで覆う処理)を行い、+3cmの水位を保つ湛水処理を行った。処理開始後6または9日目に水面下の胚軸の生切片を作成し、二次通気組織の発達程度を観察した。 3.結果の概要 胚軸に環状熱処理を行った植物体を湛水条件下で栽培すると、処理した部位より上位の胚軸には二次通気組織が形成されたが、下位には形成されなかった。初生葉に連続暗処理を行うと、胚軸には二次通気組織は形成されなかったが、オーキシン(IBA、IAA、2,4-D、α-NAA)を添加した水溶液で湛水処理すると形成された。二次通気組織を形成に関与する物質は初生葉以上の葉で光を必要とする系を経て合成されて師管を通じて胚軸に供給されること、また外生オーキシンにより光合成系を必要とせずに通気組織が形成されることが示唆された。
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