研究概要 |
単為結果性である全雌花性キュウリ品種を用いると,短期間に多くの果実が収穫できるが,一部の果実は開花後すぐに肥大を停止し,さらにその一部はそのまま黄化する.この果実間競合と似た現象は,1節に着生する花芽数が決定する際にも観察され,さらに収量性を高めるためには花芽分化の機構や果実肥大の停止要因を解明する必要がある. 本年度は花芽数の決定機構を花芽分化速度と退化速度から明らかにし,多雌花性の品種では,花芽の分化速度が速く,退化速度が遅いことが明らかとなった.次に,果実間の競合機構を知るために受粉の有無,着果負担の有無を組み合わせた4処理区について,開花2日前から収穫数日前までの果実の内生サイトカイニン類(CKs),オーキシン(IAA)を分析した.この結果,果実の肥大を誘導するのはCKsではなく,IAAであり,受粉でその反応が早いこと,単為結果の果実では濃度上昇が遅れるものの,その後の濃度は受粉果実よりも高くなることなどが明らかとなった.また,単為結果で着果負担が大きい果実は生長が開花後数日で停止し,開花12日後のIAA濃度が異常に高くなっていたことから,ホルモンの生成より分解に問題がある可能性が示唆された.また,人工気象室での生長解析を行い,通常の単為結果での果実生長では,開花から開花3-4日後がその後の果実生長開始の成否に重要な時期であることや,着果負担の量(乾物蓄積量)よりも着果負担となっている果実の成長速度が後から開花した果実の生長を抑制している結果が得られた.さらにこの時期の果実内の細胞分裂について組織学的観察やヒストンH4の発現を調べたところ,開花後数日は細胞分裂期から肥大期への移行時期であることが明らかとなった. 以上のことから,開花後数日の細胞分裂活性,内生ホルモン濃度の差がその後の果実肥大の成否に強く影響していると考えられた.
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