これまでの研究でドリアンの自家受粉後の結実率は他家受粉と比較して低いという結果からドリアンの自家不結実性が示されている。また、自家受粉であっても花柱内での花粉管伸長の阻害は発生しないという点からドリアンには後発型自家不和合性(Late-acting self-incompatibility)が存在すると考えられる。そこで今年度は自家受粉および他家受粉を行った後の子房部における胚珠の変化の観察を行った。受粉後の子房部を採取した後パラフィン切片を作製し、胚珠の形状、受精および胚発生を観察した。その結果、まず自家受粉、他家受粉に関わらず花粉管は珠孔部にまで到達していることが観察された。さらに受粉14日後では、他家受粉を行った果実では正常に発育している胚珠が多く観察されたのに対し、自家受粉を行った果実内の胚珠ではかなりの胚のうが崩壊していた。特に卵装置の珠孔部からの脱離と珠心と内種皮の変形という2つの特徴的な変化が観察され、このことがドリアンの自家不結実性を引き起こしている原因と考えられた。 また、昨年度単離したSSRマーカーについて、タイにおいて採取した約80品種と野生種7種を用いて各SSRマーカーの有用性について調査した。単離された21種類のSSRマーカーの中から品種間で多型を示した6つのマーカーが選抜された。これらのマーカーを用いることによって約80品種のほとんどを識別できたが、幾つかの品種については同一の遺伝子型を示すものもあり異名同種であると考えられた。
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