研究課題
本研究では、省農薬使用の野菜セル成型苗生産を目指し、植物内生放線菌を利用したセル成型苗病害の新規生物防除技術の開発を目的としている。まず三重県内のセル成型苗育苗施設で病害の発生実態を調査した。その結果、キャベツセル成型苗には多様な糸状菌性および細菌性病害が多発し、特に、栽培期間を通じて高頻度で発生する種子伝染性黒すす病による被害が極めて深刻であることを突き止めた。つぎに、圃場生育の健全キャベツから内生放線菌の分離を試みた結果、前年度までに分離した52株に加えて新たに約80株の放線菌を得ることに成功した(以下、分離株と称する)。キャベツセル成型苗の病原糸状菌6種(黒すす病菌、黒斑病菌、苗立枯病菌、ピシウム腐敗病菌、根朽病菌、先枯病菌)に対する分離株132株の拮抗性を検定したところ、黒すす病菌に17菌株が拮抗性を示し、そのうち3菌株は全ての病原菌の生育を強く抑制した。つぎに、分離株の生物防除活性を検討するため、分離株を混和した育苗培土で育成したキャベツ幼苗に黒すす病菌胞子懸濁液を噴霧接種し、発病を調査した。その結果、広範な病原菌に拮抗性を示す2菌株(CN43-1株,CN56-1株)と非拮抗性の1菌株(CY58-1株)が黒すす病の発病を顕著に抑制することを見出した。これら3菌株を混和した育苗培土へ黒すす病菌汚染種子を播種したところ、放線菌未接種の育苗培土で育成した苗と比較して発病が有意に抑制されることを明らかにした。これらの結果から、3菌株の内生放線菌がキャベツセル成型苗の黒すす病防除に利用できる有望株であると判断した。現在、他の病害に対する有効性、効果的な処理方法および資材化技術の検討、生物防除メカニズムの解析を進めている。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Actinomycetologica 19・1
ページ: 7-12