Red clover necrotic mosaic virus (RCNMV)の移行タンパク質(MP)と緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合タンパク質を発現するキメラRCNMVをin vitroで作製し、これをササゲ植物のプロトプラストに接種したところ、MP:GEP融合タンパク質は細胞質中において大きな塊を多数形成することが共焦点顕微鏡観察でわかった。これは既報のTobacco mosaic virusのMPの局在とよく似ており、RCNMVがMPを含む複製複合体を小胞体膜上に形成し、やがで移行複合体の形で原形貿連絡(PD)へ移行することを示唆している。 また、当研究室で単離された、Brome mosaic virusの細胞間移行に関与するタバコ植物遺伝子NbNACa1の発現をサイレンシングによって抑制した形質転換植物(GSNAC植物)において、RCNMVの細胞間移行が顕著に抑制されることがわかった。CSNAC植物のプロトプラストでは外被タンパク質およびMPの蓄積量はコントロールのGS1植物のプロトプラストと同レベルであったことから、NbNACa1はRCNMVの遺伝子発現に影響を与えるのではなく、それ以後の段階で影響を与えることが示唆された。次に、MP:GFP融合タンパク質を発現するバイナリーベクターをアグロバクテリウムを介してGS1およびGSNAC植物葉に注入し、その局在性について共蕉点顕微鏡で調べた。その結果、GS1植物では注入後26〜30時間で細胞壁に大きな蛍光の塊が多数観察されたのに対し、GSNAC植物では同時間では少数の蛍光しか観察されなかった。注入後48時間ではこの傾向が逆転し、やがて蛍光は両植物においでほとんど消失することがわかった。この結果はNbNACa1遺伝子がRCNMVのMPの局在性に影響を与えることを示唆している。 現在、これらの現象についてさらなる解析を進めている。
|