カキでは、各地でバッテン果やイレズミ果と呼ばれる原因不明の果皮障害が発生し問題となっている。本障害は接ぎ木で伝染するとの報告があるため、ウイルスやウイロイドが病原として考えられている。そこで、17年度は、山形県、新潟県、和歌山県、岡山県および広島県のカキからウイルスおよびウイロイドの探索を行った。その結果、Pear blister canker viroidを検出するために設計されたPCRプライマーを用いたRT-PCRによって多くのカキから増幅断片が得られた。それらの塩基配列を解析した結果、異なる4種の配列が確認された。塩基配列データベースに対する相同性検索の結果、3種はApple fruit crinkle viroid、Citrus viroid OSおよびGrapevine yellow speckle viroid 1とそれぞれ95%以上の相同性を示し、これらウイロイドがカキに感染していることを明らかにした。さらに残りの1種はCitrus Viroid I-LSSと部分的に高い相同性を示すものの、既報のウイロイドとは明らかに異なることから、新種のウイロイドである可能性が示された。現在、これらカキから検出されたウイロイドについて全長配列を解析している。一方、果樹ではこれまでにひも状ウイルスが多く確認されている。そこで、数種のひも状ウイルスの検出が期待できるプライマーを用いてRT-PCRを行ったが、ウイルス様の配列は検出されなかった。今後は、カキからのウイルスおよびウイロイドの探索を進め、接ぎ木伝染性果皮障害との関連を調査する予定である。ブドウについては、盛岡県、秋田県および山形県の一般ブドウ栽培園から試料を採集し、現在、それらについてウイルス診断ならびに塩基配列の解析を行っている。得られた情報に基づき、より高精度な診断法の開発を行う予定である。
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