青枯病菌Ralstonia solanacearunのhpx遺伝子の産物が実際にエフェクターとして宿主植物の細胞内に移行するかどうかを検証した。独自に構築したプラスミド系を用いて、各推定エフェクター(Hpx)のN末端側約250アミノ酸にBordetella pertussis由来のアデニル酸シクラーゼドメイン(Cya)を融合したタンパク質を発現するR.solanacearun変異株を作出した。これらの菌株を感染させた植物葉を用いて、cAMP合成活性を指標としてCyaレポーターアッセイを行い、R.solanacearunからHrpタイプIII分泌装置を介して植物細胞内へ移行する26のエフェクターを現在までに同定した。本研究から、植物Fボックスタンパク質に酷似したR.solanacearunのHpx遺伝子産物(Fb1)が実際に植物細胞に注入されるエフェクターであることを証明した。この結果は、Fb1エフェクターが宿主植物のSCFユビキチンリガーゼ複合体に構成成分として入り込み、宿主のユビキチン・プロテアソーム系を乗っ取る可能性を強く示唆する。また、今回新たに同定されたR.solanacearunのエフェクターの中には、ゲノム上で重複遺伝子ファミリーを形成しているものが複数あり、これら推定エフェクターを含めると、R.solanacearunは少なくとも40以上のエフェクターを有すると推察される。 同定した各エフェクターの遺伝子破壊株をそれぞれ作出し、宿主ナスで病原性を調べたが、単独で大きく病原性に寄与するエフェクターは見出されなかった。しかしながら、重複遺伝子ファミリーを形成するfb1遺伝子7つを全て破壊した変異株では植物病原性が低下することを見出した。以上の結果はFb1エフェクターが実際に植物の細胞内で病原性因子として機能することを示している。
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