昨年度同定した青枯病菌Ralstonia solanacearunのエフェクター遺伝子の中には、ゲノム上で重複遺伝子ファミリーを形成しているものが複数存在した。また、R.solanacearunのゲノム上には他の植物病原細菌で報告されたエフェクターと相同性を示す遺伝子がいくつか存在することが明らかとなっている。今年度は、これら未クローニングのエフェクター候補遺伝子を全てクローン化した。昨年度に構築したCyaレポーター系を用いて、これらの遺伝子産物が実際にHrpタイプIII分泌装置を介してR.solanacearunから植物の細胞内へ移行するかどうかを検証した。その結果、新たに28種類のエフェクターを新規に同定することに成功した。昨年度に同定した26種類のエフェクターと合わせると、R.solanacearunは植物に感染する際に少なくとも44種類以上のエフェクターを宿主細胞内に注入して、宿主細胞機能を制御していることが明らかとなった。 これらのエフェクターの植物細胞に対する機能は不明であるが、何らかの形で植物の病害抵抗性反応を抑制する機能を持つと推察される。エフェクターの機能を網羅的に且つ迅速に解析することを目的に、同定した全エフェクター遺伝子をカセット化した。併せて、エフェクター遺伝子を植物または酵母の細胞内で構成的または誘導的に発現させることができる実験系を整備した。この系を用いて、植物の病害抵抗性反応や真核細胞が有する各種の細胞機能に影響を与えるR.solanacearunエフェクターを網羅的にスクリーニングし、真核細胞に対して興味深い活性を示すいくつかのエフェクターを同定することに成功した。
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