本研究はエビガラスズメ幼虫の緑色体色の発現に重要な役割を果たす、色素結合タンパク質の合成と分泌の制御メカニズムを追究することである。本年度は以下の研究を行った。 真皮細胞および脂肪体における色素結合タンパク質の合成を調査した。その結果、eCBPは緑色幼虫の真皮細胞で合成されていることを確認した。一方、INSは緑色幼虫の真皮細胞の他に、黒色幼虫の真皮細胞および脂肪体(緑色幼虫および黒色幼虫共に)における合成を確認した。この結果はエビガラスズメ幼虫の体色が色素結合タンパク質の合成・分泌を制御することにより実現していることを指示する。 次に色素結合タンパク質の細胞内局在を調査した。その結果、緑色幼虫の真皮細胞ではeCBPとINSは共に細胞内の分泌小胞中に蓄積されていることが明らかになった。また2つのタンパク質は同一の顆粒中に存在することも示唆された。 次にeCBPが体液中へ分泌されるか否かについて検討した。体液中のeCBPの検出を試みたところ、5齢幼虫期の体液中からeCBPと思われる成分(体液eCBP)を検出した。この成分は5齢幼虫期に多く検出され、脱皮期やワンダリング期には減少した。体液eCBPは真皮細胞で認められるeCBPより分子量が僅かに大きいことが分かったので、体液eCBPのN末端アミノ酸配列を調査した。その結果、体液eCBPは通常真皮細胞で認められるeCBPよりN末端が7アミノ酸残基上流から開始したタンパク質であることが明らかになった。現在、このようなタンパク質が生成する原因を追及している。 さらに平成18年度3月8日から平成18年3月11日まで大韓民国を訪問した。Ho-Yong Park博士およびKwang-Youl Seol博士と会談し、韓国における昆虫の研究の現状について情報を得た。 来年度はさらに色素結合タンパク質の合成・分泌機構を追求する予定である。
|