本研究はエビガラスズメ幼虫の緑色体色の発現に重要な役割を果たす、色素結合タンパク質の合成と分泌の制御メカニズムを追究することである。本年度は以下の研究を行った。 まず、昨年度検出された体液中のeCBP、heCBPについて更に詳細に研究を行った。このheCBPは真皮細胞に存在し、体色発現に関与するeCBPよりN末端が7アミノ酸残基上流から始まるタンパク質である。まず、真皮細胞からミクロソームを回収し、含まれるeCBPを特異抗体で検出したところ、そのほとんどがheCBPであった。ミクロソームは祖面小胞体を多く含むことから、合成直後のeCBPがheCBPであることが考えられた。そこで、35Sで標識したアミノ酸を用い、生合成後のeCBPのプロセシングを調査した。その結果、予想通り、eCBPは最初、heCBPの形で合成され、その後、pro配列が切断されることで、eCBPとなることが明らかになった。 次に真皮細胞中の分泌顆粒に含まれるeCBPを調査するため、分泌顆粒の単離法の改良を試みた。その結果、分泌顆粒はショ糖密度勾配遠心法により、ほとんど爽雑物のない状態で回収可能となった。そこで、内容物を調査したところ、顆粒内部にはheCBPは検出されず、eCBPが多量に存在した。この結果は、heCBPとeCBPで生合成後の運命が異なることを示唆する。今後は、heCBPが真皮脂肪内に蓄積されず、体液中に分泌されるのか研究する予定である。
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