Bmdsxはカイコの性分化に関わる遺伝子であり、性特異的スプライシングを受けることによって雌雄で異なる翻訳産物を生じる。本年度の研究により、Bmdsx pre-mRNAの第4エクソン上に存在する複数のシスエレメントがオス型のスプライシングに必要であることが明らかとなったこれらのシスエレメントと相互作用する因子の存否を明らかにする目的でRNAゲルシフトアッセイを行った結果、第4エクソンの5'端から15〜34ntの領域がオスの培養細胞(NIAS-Bm-M1細胞)由来核抽出物と相互作用することが判明した。また、この領域の塩基配列に変異を導入するとNIAS-Bm-M1細胞核抽出物との相互作用がみられなくなることもわかった。同じ変異をBmdsxミニ遺伝子に導入し、NIAS-Bm-M1細胞にトランスフェクションしたところ、このミニ遺伝子はオス型のスプライシングを受けず、メス型のスプライシングを受けることが明らかとなった。この配列に結合するタンパク質の1つがBmSqdであることがわかったため、NIAS-Bm-M1細胞におけるBmSqdの発現をRNAiによって抑制したところ、メス型のスプライシングを受けるBmdsxの割合が対象区に比べ有意に増加することが確認された。現在、この配列に結合するBmSqd以外のタンパク質についても、その同定と機能の解析を進めている。また、本研究のもう1つのテーマであるカイコのジーンターゲティング法の開発についても、既にターゲティングスターター系統(I-SceIエンドヌクレアーゼとFLPリコンビナーゼをトランスジーンとしてもつトランスジェニック系統)の樹立を終えている。現在、標的とする遺伝子をノックアウトするためのターゲティング分子をトランスジーンとしてもつトランスジェニック系統の樹立を行っているところである。
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