研究課題
本研究では、プロテオーム及びマクロアレー技術を植物栄養学の分野に取り入れ、根粒で発現している炭素代謝関連酵素の発現減少による根粒内のタンパク質・遺伝子を網羅的、系統的に解析し全体像を検索した。これまでにミヤコグサ根粒で強く発現しているC4光合成関連酵素(PEPC:ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ)を欠損させた形質転換体(Asppc)を作製した。作製した形質転換体は根粒を着生したが窒素固定能の減少がみられた。この変異体を用いて、代謝レベルでの変動を網羅的に調べるためにマクロアレー解析を試みた。定量化にはmRNAを33Pで標識し、ハイブリダイゼーション後、Amersham社製のアレービジョンとStormの組み合わせを使用した。その結果、キチネース、フェニルアラニンアンモニアリアーゼなどストレス誘導遺伝子発現が抑制されており、形質転換植物が病原菌に対して感受性が高くなるというこれまでの報告と一致した結果が得られた。一方、Asppc根粒のAS(アスパラギン合成酵素)、スクロース合成酵素などの遺伝子発現も減少していた。アスパラギンはミヤコグサ根粒の窒素転流化合物として知られており、PEPC酵素発現が減少したことでアスパラギンの地上部への転流が抑制されていることを示唆している。スクロースは地上部から根粒へ転流される炭素化合物である。スクロース合成酵素遺伝子の発現が抑制されていることから、根粒内のスクロース含量が低下している可能性を示唆している。また、プラスチドで発現している遺伝子が数多く減少していることから、PEPC酵素の減少によりプラスチド内の代謝に大きく関与していると考えられる。今後はさらにアレー解析のデータを詳細に調べ、代謝レベルでなにが減少しているのか考察していく予定である。
すべて 2005
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J.Biochemistry 137
ページ: 33-39
Plant and Cell Physiology 46.5
ページ: 743-753
ページ: 754-761