野性植物のミゾソバはCd耐性でしかも茎特異的な集積をすることから、その器官特異的なCd集積と無害化機構について解析を行っている。これまでCdが茎の特定部分に集積し、葉へ移行しないことやCdの移行・無害化に関与していると思われるニンヒドリン陽性物質の存在を見つけている。ミゾソバのCd集積とニンヒドリン陽性物質の存在量について検討するため、ミゾソバをCd含有水耕液で処理後、節位(上中下)の部位別に分けて採取しCd分析を行った。その結果、Cd含有率は下位で高く、節>節間>葉柄>葉身の順に顕著な差が見られたが、上位では含有率が全体に低く部位による差がほとんど見られなかった。また節と節間のニンヒドリン陽性物質の生成は、Cd含有率の高い下位の節で多いのに対して上位で少なく、ニンヒドリン陽性物質がCd集積部位に多く存在していることが明らかとなった。HPLCにより搾汁液のアミノ酸分析を試みたところ、既存のアミノ酸以外でCd処理の有無で異なる複数のピークが検出された。現在この物質の単離精製を続けている。さらにこの物質がフィトケラチン様のペプチドである可能性も捨てきれないことから、フィトケラチン合成酵素遺伝子の縮重プライマーを設計してPCRによる増幅を試みたところDNA増幅が確認されたので、今後さらに検討する予定である。一方、Cd集積に関しては、細胞壁における詳細な集積部位の検討を行った。ミゾソバを水耕栽培し、Cd処理後、細胞壁成分のペクチン、ヘミセルロース、セルロースに粗分画してCdを分析した。その結果、ペクチンは他と比べて成分量は少ないものの処理によりその量が増加し、またCd含有率が最も高かったことから、茎への集積にはペクチンが関与しているものと推察した。今後は、他の重金属元素分布や無害化物質の生成に関与する酵素の解析などと併せて、無害化と集積の関係をさらに明らかにしていく予定である。
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