ミゾソバはCd耐性で茎特異的に高濃度のCdを集積可能であることから、その器官特異的なCd集積と無害化機構について解析を行っている。これまでにCdの無害化や地上部への移行については未知のニンヒドリン陽性物質が関与していることを明らかにしている。そこでCd処理に伴って増大するニンヒドリン陽性物質の実体を明らかにするために、Cd処理に伴う溢泌液(Xylem sap)中のアミノ酸について検討した。水耕法により栽培したミゾソバを、Xylem sap採取のため15〜60μMの比較的低濃度でCd処理した後、茎を切断して得られるXylem sapを採取し、HPLCでアミノ酸分析(アミノ基含有物質の検出)を行った。同様に無処理のミゾソバからもXylem sapを採取・分析してその組成や量を比較した。その結果、Cd処理に伴って既存のアミノ酸では、酸性アミノ酸のアスパラギン酸、グルタミン酸、非極性アミノ酸のアラニンが増加する傾向を示し、非極性アミノ酸のメチオニン、フェニルアラニンは減少傾向を示した。その他多数の未同定ピークが認められ、グルタミン酸近傍のUn Known Peak4;UKP4、アラニン近傍のUKP18、リジン近傍のUKP30がCd処理によって増加する傾向を示した。さらにニンヒドリン陽性物質(F1〜F3)についても茎搾汁液から回収し、同様なHPLC分析を試みたが回収・精製が十分でなく、明瞭なピークとして検出できなかった。今後は回収・精製法を確立し、未同定ピークとあわせて構成するアミノ酸を明らかにするとともに、Cd結合性なども検討する予定である。またCd集積と葉身への移行抑制については、葉身に近い葉柄先端よりも節に近い付根部分のCd含有率が高まっており、細胞形態も節から葉柄付根部分で密になる傾向があった。今後、細胞壁構成成分などとあわせて集積機構についても検討を行う予定である。
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