ミゾソバはカドミウム(以下 Cd)耐性で体内に高濃度にCdを集積可能であるだけでなく、その集積部位が茎に特異的であるという特徴を持つ。このCd耐性および集積機構について解析を行っている。Cd処理したミゾソバ導管液中のCd濃度は処理濃度の約2倍であり、これまでにCd無害化と地上部への移行には未知のニンヒドリン陽性物質(F1〜F3)が関与していることを明らかにしている。そこでCd処理に伴うニンヒドリン陽性物質の種類と量の変化をTLCにより確認したところ、Cd処理濃度15μM、30μM、60μMで3日間処理したミゾソバから採取した導管液でF1が確認され、その量はCd処理濃度が高まるにつれて増加した。またF2、F3はCd60μM処理でのみ確認されたことから、Cdの地上部への移行や無害化には主にF1が関与しており、Cd量の増加に伴いF2、F3が誘導されて機能しているものと推察した。さらにこの物質の構成アミノ酸分析と標準アミノ酸とのTLC比較結果から、F1はGln、F2はVal、F3はLeuとIleの誘導体であることが示唆された。一方でCd集積部位である茎の細胞壁成分についても検討した。水耕栽培したミゾソバをCd120μMで1週間処理した後、細胞壁をペクチンI、II、ヘミセルロースI、IIおよびセルロースの5つに分画し、Cd分析を行った結果、熱水抽出(ペクチンI)に続き、ペクチンを架橋しているカルシウム(以下Ca)をシュウ酸アンモニウムではずすことで抽出されたペクチンII画分でCd含量がもっとも高く、集積にはペクチンが関与していることが示唆された。またミゾソバ茎の元素分析ではCd処理茎でCa含有率が低い傾向にあり、CdがCaの様にペクチンを架橋することで無害化・集積されているのではないかと推察している。今後さらに詳細な検討を行うことにより、細胞壁での集積形態を明らかにできると考えている。
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