本研究では培養可能微生物の生産する生育因子を用いて難培養性微生物を分離・培養化し、「生育因子要求性難培養性微生物カルチャーコレクション」を構築することを目的としている。本年度は効率的な生育因子要求性難培養性微生物の分離・培養化を達成するために、まず、生育因子を生産する培養可能微生物を検索した。その結果、食肉処理排水処理活性汚泥から著しいCFU (colony forming unit)向上効果を有する菌株B76株の取得に成功した。そこで、このB76株の培養液上清を添加した分離培地を作製し(この中にはB76株由来の生育因子が含まれる)、B76株の分離源と同じ活性汚泥を塗抹培養後、出現したコロニーの中からB76株の培養液上清添加培地でのみ生育する、あるいは良好な生育を示す微生物のスクリーニングを行なったところ、スクリーニングに供した104株のうち約40%の菌株が生育因子要求性であることが明らかとなった。これら44株は16S rRNA遺伝子に基づいたPCR-RFLP (Restriction Fragment Length Polymorphism)解析によって9グループに分けられたが、それぞれのグループの代表株について16S rRNA遺伝子の塩基配列を解析し、得られた配列のNCBI塩基配列データベースへの相同性検索、系統解析を行なった結果、9グループ中3グループが新種細菌、2グループが新属新種細菌であることが示唆された。
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