昨年度は、CFU向上効果を有する生育促進因子生産菌として食肉処理排水処理活性汚泥からHymenobacter sp.B76株を取得し、本菌株の上清を含む培地でのみ生育する、あるいは生育が促進される生育因子要求性微生物を多数、分離・培養化した。しかしながら、環境中に分布する生育因子要求性微生物の中には、一旦、生育因子が供給された後は通常の培養可能株と同様に生育因子非存在下でも培養が可能な状態となるものも存在することが知られている(以後、ここでは"一時的生育因子要求微生物"と称する)。そこで、本年度はB76株上清添加培地と無添加培地で生育した微生物の群集構造解析を行なうことにより、"一時的生育因子要求株"の検索を試みた。B76株上清添加培地由来微生物75株と無添加培地由来微生物72株について16SrRNA遺伝子をターゲットとしたPCR-RFLP法に基づく比較解析を行なうことにより、"一時的生育因子要求株"と推察される微生物15種23株を見出した。 また、昨年度に引き続き、培養可能微生物の生産する生育因子を要求する難培養性微生物の分離・培養化を行い、「生育因子要求性微生物カルチャーコレクション」の充実化を試みた。試料としては下水処理汚泥を用い、培養可能微生物の混合培養液上清によって生育が促進される菌株の検索を行なった。その結果、スクリーニングに供した96株の中から5株の生育因子要求株の取得に成功した。これらの菌株について、16S rRNA遺伝子に基づいた系統解析を行なうことにより、1株が新種細菌、3株が活性汚泥法において、処理機能障害の原因となるスカム発生に関与するGordonia属細菌であることを明らかにした。 さらに、取得した生育因子要求性微生物の有用性評価手法についても検討し、環境汚染物質分解(クロロフェノール分解)に関与する微生物の簡易的なスクリーニング条件を見出した。
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