研究概要 |
細胞中のrRNAの存在量は,細胞の活性と相関があることが知られている。従って,特定の微生物の由来の16S rRNAの検出と定量はその環境を評価するための重要な指標となりうる.そこで本研究においてデオキシリボザイムによる微生物由来16S rRNAの配列特異的な切断に基づいた迅速・簡便な解析法を考案した. デオキシリボザイムは一本鎖のDNAから成り,リボザイムと同様に任意のRNA配列を特異的に切断する機能を持つ.そこで特定微生物由来の16SrRNAを特異的に認識・切断するデオキシリボザイムを設計し,作用させることで,複数種の16S rRNA存在下においても標的となる16S rRNAを特異的に切断することが予想される.さらに電気泳動により,切断された16S rRNA断片と未切断片を分離し,それぞれのRNA断片の定量を行うことで全16S rRNAにおける標的16S rRNAの存在比が求められる.そこでまず,E.coli由来16S rRNAを特異的に認識・切断するデオキシリボザイム(DzECO-24)を設計した.E.coliとPseudomonas putida由来の16S rRNAをそれぞれDzECO-24と混合し,反応バッファー中において37℃で1時間,反応を行った.電気泳動の結果より,DzECO-24はE.coli由来16S rRNAのみを配列特異的に切断することが明らかになった.次に上記2種の16S rRNAを様々な割合で混合し,モデル複合rRNA中における標的rRNAの定量を行った.この結果、1%〜100%の範囲で正確な定量結果を示した.以上の実験結果より,デオキシリボザイムを用いた本法は,複合微生物系から成る環境試料あるいは臨床試料中の特定の微生物由来の16S rRNAの定量のための有効な手法であると考えられる.
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